傲慢   superbia

かしずくのはあいつ、その献身を受け取るのは私。ずっとそう2人のポジションは決まっていた。強制したわけでもなく会った時から自然にそうだった。
「だってあんたすっごく偉そうだったんで」
そう笑ったあいつは知らないだろう。そのプライドこそが私を守る鎧であり鎖なのだと。

「その条件では条約の締結はできない。我が国は対等な外交を望んでいる」
国力も領土も叶わない北の大国からの使節に黒髪の独裁者はきっぱりとそう言い放った。例えそこが質素な執務室であっても、着ているものが普通の兵士と大差ない軍服であっても瞳に宿るその輝きに抗える者はいない─それを知っているが故の傲慢に上等な生地の服を着た外交官は検討しなおしますと引き下がるしかなかった。

「強気ですねぇ」
肩がこったマッサージしろとソファにふんぞり返る御主人様の面倒をかいがいしくみる忠犬はそう先程の態度を評した。
「ふん、外交はパワーゲームだよ。ハボック。弱気を見せたら負けだ。例え内乱で国も市民も疲弊していても大国に膝を折る訳にはいかないんだ」
かつて人外の黒髪の美女に跪けと命じた男は静かにそう言う。一度膝を屈したら立ち上がるのは困難だとも。「まぁそうかも知れませんね。俺もあんたに膝をついてからずっと逆らえない」> 御主人様。跪いて恭しく手を取る男の金の毛並みをロイは尊大な手付きで撫で回す。


「大佐の事が好きです」
そう告白してきたのはあいつが先だった。でも多分意識したのは私の方が先だったと思う。だってあいつは胸の大きな女性達に惚れたのなんのと平気で私に言ってくるのだ、秘かに私が嫉妬していた事にまるで気がつかず。
そんなの許せなかった。絶対振り向かせてやると思った。この私が年下で部下の男に振り回されているなんてプライドにかけて認めない。絶対あいつの方から告白させてやると誓った─どうやって同性を振りむかせるか知りもしないくせに。
そうして馴れない駆け引きの日々。あいつのお人好しにつけ込んで懐に引き入れて、たまに甘やかして、ずっと傍において。
だけどあいつの態度に変化はない。そんな事に疲れた私はもういっそ自分で告白してやろうかなんて思いつめてしまった。プライドとあいつ一体自分はどっちが大事なのかと。
そんな時に突然の告白。

俺みたいのがこんな事言うなんて迷惑でしょうけど。けど好きなっちまったものは誤魔化せません。

迷い無く言い切る男に負けたと思ったのは自分ほうだ。

あれからずっと2人の位置は変らない。跪くのがあいつでそれを見下ろすのは私。だけど心の中で膝を屈してるのは本当は私なのだ。

でもあいつは絶対気がつかない。私が『傲慢な』ロイ・マスタングを演じ続ける限り。



                 

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