ソファーに横たわってカウンターの向こうで料理するハボックをロイはぼんやり見つめた。自分の様子が
おかしいのはとっくに相手に見破られたようで生返事しか返さないのに陽気に話し掛けて来る。鈍感なようで聡い男だ。しかもそれを相手に気付かせないようにする。話の内容は今日市場であったこと、近所の子供の話、なんと牧歌的な内容だろう。
引き換え自分が見てきたものといったら風景だけは牧歌的なのに−血にまみれた練成陣、虚ろな鎧、魂を亡くしたような金色の子供。あの時自分が感じた感情に名前がつけられない。車椅子の子供思わずを怒鳴り付けたあの激情はなんだったのか。禁忌を侵した者への怒り?同じ術者としての嫉妬?
『何を作った!』何故痛みを感じたのか。幼い少年が手足を失ったことにか、それとも引き返せない領域に入り込んだ事にか。そして何でここに来たんだろう。駅から車を走らせた時は家に帰るつもりだった。食欲なんか何処にもないのに、車を返してから足はここに向かっていた。留守と判った時はこれ以上動く気力も無く、夕焼けの中に輝く金髪を見た時は泣きたいくらいほっとした。
「できましたよー中佐。」そして今も自分を心配そうに覗き込む蒼い瞳に安堵する。答えのでない思考を巡らしているうちに結構時間は過ぎたようで、気がついたら小さいテーブルに所狭しと料理が並んでいた。揚げたてのチキンクリームコロッケに野菜スープ、サラダに付け合わせのパスタなど。
「なんか豪勢だな。」ほかほかの料理に向いながら驚いた様に言うと「だって中佐の日頃の食生活知ってますもんね、食べれる時には食べてもらわないと。それに知ってます?おいしい食事は心を元気にするんですよ。」そういいながらロイの皿に料理を取り分ける。まるで母親みたいに世話を焼くハボックに「私はそんなに落ち込んでる様に見えるか」と瞳に剣呑な光を宿しながらロイが問う。「そースねちょいといつもより大人しいかな。でもねそうじゃないんです。」と秘密めかして続ける。
「だって今日はサービスDAYだから。」「サービスDAY?」「林檎売りのおばちゃんがそう言ったんですよ。だから今日は俺が中佐にサービスする日なんです。」片目をつぶってそう言うと、ロイは最初あっけにとられ、それからあきれたように笑った。
「そういうことならせいぜいサービスしたまえ。とりあえずワインが欲しいな。それからデザートもちゃんと用意しろよ。」「YES.SIR!」慌ててワインを取りに行く後ろ姿にロイはもう一度クスリと笑う。胸にわだかまる重い物は消えはしないがそれでも心は楽になる。少なくともここに来るという選択に間違いはなかったから、答えの無い疑問は取りあえず保留にしよう。そう自分に言い聞かせてロイはフォークを手にとった。


・・今日はサービスDAYだから俺はアンタの言う事なんでも聞きます。アンタの好きなお茶に好きなワイン。デザートだってちゃんと用意しますよ。だってね俺は嬉しいんです。どういう気紛れかわからないけど俺を頼ってくれたから。あんな顔したまま一人で家に帰ってたらなんて想像しただけでぞっとする。他になにができるかわからないけど何でもするから

ーだから元気をだして。

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