翌朝、イーストシティの何処かで優雅に朝食を執りながら新聞を読んでる男が1人居た。1面のニュース欄も見ずに個人広告欄を何かを捜す様に熱心に読んでいた男は記事の一つに目を止めて薄い唇に会心の笑みを浮かべる。やはり師は自分に協力してくれた。これこそが求めていた答えだ。早速準備しよう、そして客を招待するんだ。紅蓮の焔が司る祭りに。愚かな客達はきっと派手に踊ってくれるだろう、そして僕の望みはきっと叶う。

『明日の正午にイーストシティの主要な建物、軍司令部、憲兵本部、市庁舎、駅、通信局などで大規模な爆発が起きる。君達はその騒ぎに応じて決起すればいい。全ての連絡手段は破壊されるから援軍もすぐにはこない。彼等が来た時すでにイーストシティは君等のものになっているだろう。此処を拠点にアメリストスを軍から解放すればいい。私はいつでも君達に協力する。』
雑音交じりの音が消え、小型オープンリールのテープレコーダーが回転を止めても動くものはいなかった。大規模な同時爆破テロの予告は事態の深刻さをそこにいる人々全てに思い知らせ、思考を麻痺させる。
なにしろタイムリミットは明日の正午しかも彼等が今居るこの建物も標的に入っているのだから。
「この連絡は今日の20時20分に例の酒場に掛かってきました。通話時間はおよそ2分。・・・残念ながら逆探知はできませんでした。申し訳ありません!中佐。」
少年らしさが残る顔に悔しさを滲ませながら眼鏡の軍曹は報告する。一番大事な時に誰より得意な分野で結果を残せなかったのがやりきれないのか握りしめた拳は微かに震えていた。それを一蹴するように「いや、フューリ−軍曹。君ができなければ誰もできない。」言い切った上司の顔には落胆の色は毛程も無い。
「はい、でもどの交換台を経由したかは判りました。だからこの・・ここからここのブロックの何処かであるのは確かです。それと公衆電話は使われてません。」
会議室の壁に貼られたイーストシティの地図に赤ペンで書き込まれたラインはシティの上部の一画を囲んでいるが残念ながらそれは決して狭いものではなかった。
「そうか、良くやった。・・・これは中心からかなり離れた地域だな。」
「サウスブロック、ア−デン街、ベター街、ローウェル・・殆ど住宅街です。しかもどちらかというと閑静な高級住宅街というところが多く、とくにこのア−デン街は少し高台にあたりイーストシティの名家が軒を列ねている地域です。」
ファルマンの説明に皆が首を傾げる。静かな高級住宅街に凶悪な爆弾テロリストはあまりにもそぐわなすぎた。しかし
「いや、可能性としてはア−デン街がこの中では一番あやしいかもしれない。」
地図を見ながら彼等の指揮官は断言する。
「理由を説明していただけますか、中佐。」
「第一に家の敷地が広いから中に入ってしまえば、近所の目を気にしなくていい。また街の住人の顔をしてしまえば憲兵などに不審がられない。あの辺りには軍の上層部の家もあるからな。もともと犯人は園芸業を営んでいたんだ庭の手入れなどで馴染みの家もあるだろう。」
「じゃあその1つに隠れているんスか?住人はどうなります、人質かあるいは・・殺害されていると?」
「その可能性は高い。最後にここが高台というところだ。犯人はおそらくイーストシティ全体を見渡せるような所に居たいんだ。その方が爆発の効果が把握しやすいんだろう。ともかくこのエリアを徹底的に捜索するんだ。しかも相手に気取られないように、アジトを突き止めないと。」
明日の昼にはイーストシティは火の海になる。しかし捜索範囲はそれでも広く残された時間はあと約15時間。
「あの・・中佐。はっきり確信があるわけじゃないんですが・・実は犯人からの通話を聞いている時、電話の向こうで何か低い音が何回か聞こえたんです。テープのは雑音で判りませんが、もしかしたらあれは鐘の音かもしれません。・・多分。」
いささか自身なげな顔で言い出すフューリ−にうなずいてロイは地図に紅い丸を2つ書き込んだ。
「地図で見るとア−デン街にはこことここに教会がある。窓が開いてたと仮定しても屋内に居て聞こえるのだから
結構近いと思える。ともかくこの辺りを集中して・・」
国家錬金術師の明晰な頭脳が如何に効率良く部下を動かせばいいかシュミレーションを始めた時。
「あー!!」
いきなり素頓狂な叫びが響き渡り、何ごとかと顔を上げたロイの目の前を金髪の准尉が走って部屋を出ていく。
「ど・・どうしたんでしょうハボック准尉」(フ)
「緊張のあまり腹にきたとか。」(ブ)
「ニコチンが切れたか。」(ロ)
「煙草はさっきから吸ってました、中佐。」(ホ)
突然のことにあっけにとられた仲間が好き勝手に言い合って数分後、廊下に足音を響かせて当の本人が何やら抱えてかけ戻って来た。そして黒い表紙のいささかくたびれたノートを机にひろげて早口に説明を始める。
「これ見て下さい、中佐!兵士の当直日誌なんですが3日前にア−デン街を巡回の兵士が住人から不審な光を目撃したと訴えられたって書いてあるんです。」
「−詳しく話し給え、准尉。」
詳細はこうだ。巡回中の兵士に若い女性が訴えた。前夜、斜向いの家の3階から一瞬爆発でもおきたような不審な光が見えたと。
これは火事か思ったがその後は何もおきなかったのでそのまま寝てしまった。しかし翌日いつも朝のジョギングをするその家の主人の姿が見えなかったし、娘を学校に送る母親の姿もなかった。もしかしたらガスでももれたんじゃないかと心配なので、確認をして欲しい、そう言われた兵士は真面目に(相手は若い御婦人だったので)問題の家のベルを鳴らしたするとすぐに主人が出てきてこう答えた。深夜の発光は趣味の写真をやっていて過ってマグネシウムを発火させてしまったとのこと。幸い大事に至らなかったが後片付けで今日は仕事を休んだ。妻と娘は風邪で臥せっていると。
「よく考えると何か不自然な言い訳じゃ無いスか?その時一応確認したところその家の御主人銀行の重役で家族思いで真面目な人と評判です。そんな事で仕事休むのも変だし、カメラが趣味なんて初耳だとその女性は言ったそうです。」
場所が高級住宅地だったので報告を聞いた時は見過ごしてしまったと申し訳無さそうに部下は締めくくる。
「ハボック何処だその家は。」
「住所はア−デン街G286、ニコラス・メイヤー宅、ここです中佐。」
銃の握りダコができた骨太の指が指したのは、教会があるところから1ブロックしか離れていない場所。
「ビンゴ?」
青い目に猛々しい光を滲ませてハボックは言った。

その後、慌ただしく行われた確認作業で幾つかの事実が判明した。1つメイヤー氏は3日前から銀行に出勤していない。理由は風邪。2つメイヤー宅の主治医を聞いた所ここ1ヶ月程1度も往診も相談もしていない。3つメイヤー宅とヨハン・フォークスの間に造園関係の取り引きがあった。以上の事実からロイ・マスタング中佐は決断した。

ロッカーから出した黒の戦闘服を見に纏い防弾チョッキをつける。幾つかの武器とナイフを装着し最後にホルスターに愛用の銃を収める。淀み無い馴れた動きはある種の儀式みたいなものだとハボックは思っている。こうする事によって意識を変えるのだ。日常から戦場へ、一瞬の隙が命を落とす世界へ。ロッカーの扉の裏にある鏡に映るのは無表情な金髪の若い男。薄い空色の瞳は冷たく深くそこに潜むのはたった一つの意志だけだ。
決着をつけるのだ、今夜、あの男と。

御都合主義ばんざいな展開ですが御容赦を。ジャクハボ登場で早くかっちょいいハボを書きたいのに中々進みませーん。(泪)

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