なんとか俺達が帰還した時、基地は妙に静かだった。後で聞いたらあの爆発と焔はここからでも確認できて、一体何が起きたのかと大変な騒ぎだったらしい。その上夜が明けたら軍のお偉いサン達が何人も来たのだ。そしてその中から遠巻きに俺達を見ている連中を押し退けて一人の将校が走りよって来る。
「ロイ!」
「ヒューズ!なんでここにいる?」
驚いて走りよる彼の頭をその男はぱしりと叩いた。
「なにすんだこいつ!」
「それはこっちのセリフだ!俺に黙って勝手に出征しやがって!どんだけ心配したと思ってやがる」
「しょうがないだろう命令なんだから。それよりなんでお前がここにいる」
「お前1人を戦場に行かせられるかよ!」
基地の兵士の目の前で子供のような喧嘩を始めた将校二人を見て、周りの緊張も溶けたのだろう。他の連中がどっと俺を囲んで、口々に叫ぶ。
「お前生きてたのか、ハボック。」
「一体何があったんだ。」
「もう絶対帰ってこれねえって皆あきらめてだんだぞ」
もみくちゃにされながら少佐の方を見ると友人に連れられて司令部のテントに向かうところで、俺は咄嗟に呼び止めようと手をのばしてー止めた。今さら俺に何ができる。彼は国家錬金術師で少佐殿だ。それにもう一人じゃないだろう。なんか彼より年上っぽいけどーヒゲのせいか?ーここまで追いかけて来たのだ。きっとあの光景を見ても怯むまい。そのまま俺は連中にひっぱられて下士官テントのほうに向かう。最後にちらりと後ろを見た時、司令部テントの入り口で彼がこちらを見ているのが解ったけど気がつかないフリをした。

その後すぐに少佐達は本営の方に戻り、結局あれ以来顔を見る事もできなかった。あれからすぐ部隊内の調査が行われ何人かの逮捕者と司令官の降格、それから俺は元の補給部隊に戻る事となり前線から離れた。処分された人の中にマイヤー軍曹の名は無く、彼は任務中の事故死という事になっていた。それら全てに俺は彼の差配を感じ多少は俺の事考えてくれたことに感謝した。
あれから戦局は一変し、もう普通の部隊が先陣をきるということはあまり無くなり、まず国家錬金術師が拠点を確保し、そこから一般兵が陣地を広げるという戦法に変わっていった。後方に下がった俺には前線の話は噂しか届かず、ロイ・マスタング少佐ー焔の錬金術師の名が恐怖の下に囁かれるのを歯がみする思いで聞いた。当然彼本人に会えるわけもなく、夢の中にあの砂漠で見た焔が時折現れるくらいで、それでも俺の中から彼の事が消える事はなかった。それからただ一度だけ補給トラックの荷台からはるか彼方一面の焼け野原、瓦礫と灰が吹き上げられる大地にぽつんと佇む小さなほんとに小さな影を見た。この世の終わりの風景だと隣の奴は震えながら言ったが、俺には迷子の子供みたいに見えた。この戦争が終わるまで彼はどのくらいの傷を負うのか、それが癒される時は来るのか。

どうかその時が来るようにーと始めて俺は神に祈った。

それから何ヶ月か経ってーイシュヴァール内乱は終わりを告げた。



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