「で結果としてどう始末付けたんだお前は」
「どうも。放火犯達はまとめて憲兵隊にくれてやった。人気のない倉庫でなにやら怪しい会合が開かれていたが突然そこで爆発が起きたと善良な一般市民からの通報付きで。後はハクロ将軍の仕事だ」
「あ、そー。それで目的の物は手に入ったか?」
「・・ああ」
ここだけ答えは歯切れが悪い。勘の良い男がそれを見逃すはずはないのだがヒューズはただそうかと頷いただけ。
「よかったじゃん。とはいえ私情で皆を振り回したんだそこのところはリザちゃんにきっちり叱られておけ、俺の分もまとめて盛大に」
「判っている、お前にも色々迷惑かけた。すまないヒューズ。子細は今度セントラルに行った時必ず話すから」
「お前が素直に謝るなんて百年に一度の事だな。ま今度こっちに来たら高い酒奢ってもらうさ。覚悟しとけよロイ」
言い方はふざけていたが声に笑いは無かった。勝手な行動を取って危険な目にあった親友をスクェアグラスの男は多分まだ怒っているのだろう。それを止められなかった自分の事も含めて。それでも事情を無理に聞き出さないのはこの件にロイの過去が関わってるんじゃないかと薄々気付いているからだ。その気遣いをロイも察しているからいつもの簡単な家族自慢の後に切れた電話に向かって彼はもう一度
「すまない、マ−ス」
と言った。

「お優しい方ですね、ヒューズ中佐は」
何も言わなかったセントラルの男と比べて目の前のヘイゼルの瞳はそうじゃなかった。冷静な態度はいつもと変らないが目の前の上司に向ける瞳は北壁の女王と異名を取る某将軍に引けを取らない程冷たい。その視線に晒されて国軍大佐は鷹に狙われた小動物と同じ心境を味わった。
「でも私は違います。例え上官といえども言うべき事は言います。マスタング大佐、あなたは部下に偽りの理由を言って行方をくらまし1人でテロリストと関係がある人物に会いに行かれた。それも非常に個人的な理由で・・違いますか」
判決を言い渡す裁判官だってこれよりは優しいだろう。いつものように雷を落とさない分彼女の怒りは激しい。
「おまけに迎えに行った護衛官を言い包めて支配違いのニューオプティンで作戦行動をとった。その結果があの火災と爆発事故です。ハクロ将軍に気付かれたら何と言い訳するつもりだったんです」
こんなにしつこく言うのもいつもの中尉らしくなかった。だけどその怒りの原因をロイは知ってる。
「言い訳も何もない。これは私のミスだ。皆に迷惑をかけて本当にすまなかった。ホークアイ中尉・・・リザ」
だから真摯に謝罪すれば滅多に使わないファーストネームにヘイゼルの瞳が揺らいで
「そういう事を言ってるんじゃありません、大佐!」
冷静な声が初めて乱れた。
「ヒューズ中佐に聞きました。今度の件は錬金術の本が関わっていると。あの本なのでしょう?そのせいで大佐が御自分を危険な目に合わせる必要なんてないと私は言っているんです。私との約束のせいでこんな事になったなんて」
「君のせいではないよ、ホークアイ中尉」
感情のままに流れる言葉を止めたのは深い漆黒の眼差し。
「2度と焔の錬金術師を生み出さないと誓ったのは私の意志だ。今度の事は最初から最後までその私の私情に走った行動が原因なのだ。君や皆に迷惑を掛けて本当にすまないと思う」
「・・・こういう時だけ素直なのは卑怯ですよ。大佐」
下げられた黒い頭に向かってホークアイ中尉は苦笑しながら謝罪を受け入れる。そうして
「チャーリ−曹長達なら何も言わなくても大丈夫でしょう。ブレダ少尉やフューリ−曹長には私から簡単に説明しておきます。ですがハボック少尉には大佐が直接説明してあげて下さい。貴方にはその義務があると思います」
どこまで2人の関係を知っているのか素っ気無くそれだけ言うと用意した紅茶を置いて有能な副官は執務室を出て行く。その金髪の後ろ姿を見送りながらロイが思っていたのはもう1人の金髪。煤に汚れたそれがイーストシティに帰還するトラックの中で思いきり項垂れていたのをロイは知っている。その原因が自分である事も。
「・・・参ったな、本当に」
あれからハボックは仕事以外で話し掛けてくることはなかった。さもあろう危険を顧みずあの本を焔の中から取り戻してきたハボックを叱責したのはロイ自身。後になって冷静に考えればあの時ハボックの耳は爆発のショックから完全に回復してなかったはずだ。当然行くなというロイの命令も聞こえなかった訳でだからあの叱責はハボックにとって言い掛かりに等しい。獲物をくわえて褒めてと尻尾振る猟犬を待っていたのは御褒美では無く主人の理不尽な怒りだったなんて誰が聞いても酷いと思うだろう。
「そうだな・・中尉の言う通り奴には事情を聞く権利がある」
誰にも話した事なかったあの火蜥蜴と自分の長い長い物語。ハボックはそれを聞いて何を思うだろう。

「昨日はどうもありがとうございました、ハボック少尉」
練兵場で部下の訓練を見ていたハボックに声をかけてきたのは同じく訓練をしていたつり目の男。
「あーチャーリ−曹長だったけ。助けられたのは俺のほうだろ?あの時あんた等来てくれなかったらこっちが危なかった」
礼を言うのはこっちだよとハボックは笑ってポケットから煙草を差し出すと相手は素直に受け取って自分のライターで火を付けた。そのまま無言で2人の男はグランドを見つめながら白い煙を空に帰す。
「いや、あなたがああ言わなかったら私は無理にあの火の中を突破しようとしたでしょう。正直マスタング大佐があんな事できるなんて知りませんでしたから」
「ああ空気を操って火を消す術か?前にテロで可燃物があった倉庫に火が移りそうになった時があってな。大佐が術であっという間に火を封じ込めた。それを見てたから今度もそうするんじゃないかと思っただけだよ、そんだけ」
肩を竦めて苦笑する顔にはこの男には珍しく僅かに影がある。その原因は目の前の男もしっかり目撃したはずだ。正直蒸し返して欲しく無いのに何を言いに来たのかと探るような視線を向ければ
「・・我々が知っているマスタング大佐は焔を消す術など持ってなかったので、ハボック少尉」
相手の言葉にハボックの胸がきりと傷む。
「俺とあいつら・・あそこにいる連中は内乱時マスタング、当時は少佐の部下でした。もっとも名前も憶えて貰えませんでしたけどね」
「国家錬金術師は単独行動じゃなかったのか」
ハボックがロイと出会った時ロイ・マスタングはただ1人きりであの荒野に来た。
「最初はそうでしたね。でも軍が彼等の扱い方を把握するようになると部下が付くようになったんです。主に護衛が役目でしたが大佐には既に『鷹の目』がいつもついていた。だから俺達の役目はせいぜい後始末ぐらいでしたよ。多分大佐は部下がいた事すら知らなかったでしょう」
この男もハボックの知らないロイを知っている。多分決してロイが話そうとしないあの戦場でイシュヴァ−ルの悪魔と呼ばれたその姿を。
「だから最後に彼に挨拶した時も最初はきょとんとした顔してましたっけ。・・・もっと聞きたいですかハボック少尉」
誘惑の声はひどく優しくハボックの耳に響いた。

やっと次から捏造過去話に入れる−。思いきり勝手に作ってますがお許し下さい・・

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